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ハネムーン病、あるいは膀胱炎の話をしたい

リプロライツ関連のトピックを調べていて、非常に強く思ったわけです。 恋人、または配偶者のいる世間の女性は膀胱炎に苦しみすぎてやしないか。

膀胱炎ってしってますか?

パートナーのいる女性は大概知っているのではないかと思う。 何故か。『性交経験者の女性はかなり高確率でかかる病気だから」です。

膀胱。字面がパワフルである。これだけ見てもぴんと来ない。 でも、ものすごいありふれた病気。女性にとっては。 性交経験がなくても罹りうる。ただ、不衛生な性交渉を行うとかなり高い確率で罹る。 そして、にも関わらず、パートナー間で問題が共有されづらい。

しかし、下手すると死ぬ病気でもあります。脅しではない。

girlschannel.net

膀胱炎は、セックスが原因となりやすい

初回の性交で罹る女性が多く(これは、キス病などと同様、異なる常在菌同士の行き来が起こるため、とされる) ハネムーン病、あるいはハネムーン膀胱炎、ハネムー腎盂炎などと呼ばれる。 男性がかかりにくいのは、尿道が(外性器を兼ねていて)長いため。 大腸菌などのありふれた常在細菌が引き起こす感染症なので、所謂性感染症ではないわけですが、 罹患すると、男性にとっての陰部の感染症や、泌尿器疾患と張り合うレベルの苦痛を伴います。 加えて重症化しやすく、腎盂炎まで進行すると血尿・高熱と重い症状を引き起こす。しかも慢性化・反復の可能性が高い。

事実上、セックスが原因で起こる膀胱炎は『性交によって引き起こされる細菌感染症』です。

男性にしろ女性にしろ、外性器は排尿器官を兼ねている。すぐ近くには排便器官である肛門もある。トイレの一歩手前である。それを、粘膜部に接触させる、あるいは同じ手指で触る、それ自体が一定のリスクを伴うわけです。

具体的に注意するポイントは?

  • お尻を触った手で性器付近を触らない
  • 性器と手指は事前に清潔に、爪は切る
  • できればシャワーを浴びる
  • 女性の場合は、セックスのあとなるべくトイレに行くようにする

一見すると、些細なことだけど大事です。そんな機会ないよ!って人も覚えておくと良いかも。 男性の場合、このへん気遣えないと、パートナーの明確な拒絶はなくても失望されている可能性がけっこうある(明確に、危険な病気に罹る可能性のある行為を繰り返されている、わけですから)ということも念頭に置いたほうが良いかな、とも思います。しかし、「彼氏が事前にシャワーを浴びてくれない」「やめてといっても肛門を触るせいで繰り返し再発している」みたいな書き込みを見ると若干、こころがつらい。女の我侭じゃないよ。実際問題としてあぶないんだよ……

このトピックについての女性側の意見を拾っていると、男性の無理解を嘆くものが一定数存在していて、中々世知辛い気持ちになります。 多くの場合、「知識がない」「意識できない」背景があるのかな、と愚考するわけですが。 いかんせん身体の下のほうの病気であるが故に、打ち明けにくい、というのもあると推測。

「セックスのリスクが女性だけに掛かるケース」としてはある意味、妊娠よりも発生頻度が高いわけで、パートナーさんが罹ってしまった場合、自分には関係ない、とは考えず、大事にしてあげて下さい。 治療中のセックスは絶対にやめよう。

余談

しかし、エロゲで「セックスの翌日にヒロインが寝込む」展開って、あんまり見た記憶がないな、と。 女性向け恋愛小説とか少女小説だとたまに見る。このあたりを思い返して女性の価値観、恋愛観に、「愛する人の欲望を受け入れたリスクを引き受けることの美学」みたいなやつがあるのかもしれない、と考えたりします。ハネムーン病っていうと、ロマンティックに見えなくもないというか……実際は膀胱の病気だけど……

でもこれ、実際罹るとロマンティックも何もなく、ひたすらしんどい。 自分は一回かかったけれど、以降再発はしていません。恋人氏は普通に気遣ってくれたしすごい謝られたんだけれども、自分の無防備さを反省した。セックスにおける健康リスクは女性のほうが高い。それでも自分の身体なのだから、相手任せじゃダメで、よりクリティカルな事態を避けるために(責任を負わせないために)、常に意識してなきゃいけない。 男女ともに「自分の身体を大切にしてこそのコミュニケーション」って感覚はすごく大事だと思う。

ただ、そういう反省とは別に、別にひたすらしんどかった。一日何回もトイレに行かなきゃいけないのに行くたびにめちゃくちゃ痛いし仕事中困るし、腎臓からくる発熱が落ち着いても抗生物質で熱を出すし体力は搾り取られるし。 それと、男性の前立腺障害の辛さに思いを馳せた。これはつらい。

具体的に、罹ってしまったらどうする?

www.skincare-univ.com

治療については専門的な解説サイトが山ほどあるので、皆様参考にして下さい。 放置しても直らず、重症化すると命に関わるので注意が必要です。 ざっくりと対処法をまとめると、

  • なるべく早く泌尿器科or産婦人科or内科に行って、抗生物質を出してもらう
  • 薬は必ず飲みきる。尿検査でOKが出るまではきちんと通う。
  • ストレスと疲労が抵抗力を下げる。極力、無理を避ける
  • 水、あるいは利尿効果の望める飲料を一日3リットル程度意識して取る。
  • こまめにトイレにいく。

膀胱炎は、セックスが原因とは限らず、長時間小用を我慢したり、体力の低下によっても発症します。 うっかりパートナーさんが罹ってしまった場合は、早めの受診を勧めてあげてください。

セックスの基礎知識(3) コンドーム以外の避妊法について、及び、緊急避妊について。

前回→ yaya.hatenablog.com

前回はコンドームの使用するケースを中心に解説しました。 現状、世間的には「とりあえずコンドームを使えば安心」みたいな風潮があるわけですが、一歩突っ込んで知ろうとすると「選択肢が多すぎてわかりにくい」「コンドームを使ったときの避妊失敗についての情報が不十分である」などの問題があるように感じています。少なくとも、わたし自身はこの点、非常ーに不安だった。

「こうすればある程度は(※)安心だよ」という、わかりやすいアウトラインが欲しい。 そのへんの需要を意識してかいてみる。

いろいろな避妊手段

詳しく説明すると長いので、避妊手段の仔細についてはこのあたりを参考に。

www.hinin-style.jp

一般的には

「メインはコンドームorピル(もしくは併用)」。 ただしコンドームには脱落の危険が、ピルには呑み忘れの危険がある。 これに併せて、リスク回避や経済事情を考慮して検討、といった感じが現実的。

コンドーム

男性器に被せて物理的に精液の接触を防ぐ。現在、日本では主流の避妊法。コンビニ・薬局など、安価で入手性が高い。

ピル

卵胞ホルモンと黄体ホルモンを含む製剤を服用することで擬似的な妊娠状態を作り出し、着床を防ぐ。21日服用し、7日休むことで生理周期を固定する。そのため、月経困難などの治療で保険適応が可能。血栓症などのリスクはあるが、第一世代、第二世代と低容量で使用できるにつれ、副作用は軽減されている。体質的な相性も大きい。

IUS(ミレーナ/子宮内避妊システム)

黄体ホルモンを持続的に放出するプラスチック製の小さな器具を子宮内に入れて妊娠を防ぐ。出産経験者向き。

精子剤(フィルム・ゼリー・錠剤)

薬剤を膣内に挿入して精子を殺す。流れ出てしまう危険性、アレルギーの可能性などもあり、主流ではない。 多くの産婦人科などでは「あくまでも補足するための避妊法」として勧められることが多い。

リズム法

月経周期や基礎体温の変化から排卵日を予測し、その間の性交を避ける。いわゆる「安全日」「危険日」。 これに頼る若年者は多いが、実際には、確実性が非常に低い。 むしろ「妊娠を望むとき、確実性を上げる手段」と捉えるべき。

リスクヘッジとしての緊急避妊

何故必要なのか

現在主流となってる避妊法はコンドームで、入手性が高いのもコンドーム。

けれど、「コンドームは一定確率で避妊失敗する」。

原始的な方法であるが故に確実だけれど、前項で述べたようにずれる・はずれる・空気抜きの失敗などの事故の可能性は除外できない。

そんなときのために「緊急避妊薬」という手段があります。 現在は(原則)、産婦人科で処方を受ける必要があります。

緊急避妊について

「避妊具での避妊に失敗した」または「ピルを飲み忘れた」というケースの為に、緊急避妊法が確立されている。あと、このエントリの趣旨から若干外れるが、レイプされた等の理由で不可抗力的に無防備な性交に及ばされた際にも利用される。

性交に及ぶ場合、およそ必須の知識と言ってよい。

緊急避妊薬って具体的にどういうもの?

  • 緊急の手段として、子宮内に器具を挿入する避妊法と薬品を使うものがある。前者はほぼ使われない。
  • 薬品を用いた避妊手段は二種類ある。 *「通常量の四倍のピルを服用する方法(ヤッペ法)」と、緊急避妊薬を服用する方法がある。
  • 前者は副作用が大きいため、後者が主流。これが一部で話題になっている、ノルレボと呼ばれる緊急避妊薬
  • これは、現在、産婦人科でしか処方されない。処方薬で15000円程度、診察料込みで20000円~25000円程度。
  • そのため、日本国内では入手ハードルが高い。手元にない場合は産婦人科へ。

ノルレボの使用法について

  • 性交渉から72時間以内の服用。
  • 早く服用すればするほど妊娠確率を下げる。
  • 次の生理を待って妊娠検査キットを使い、反応しなければ避妊成功。
  • 120時間以内なら一定の効果が期待できるが、100パーセントではない(8%~2%程度まで下げる)

『お守り』としての緊急避妊薬

ノルレボは結果が確認できるまで時間がかかることに加え、ホルモン製剤であることに違いはなく、女性の身体への負担は(旧来の方法に比較すれば少ないとは言え)ゼロではない。そのため、常用はあまりにもリスクが大きい。平常時は従来どおりのコンドーム、ピル、殺精子剤などの使用が現実的。ただ、コンドームには避妊失敗のリスクが、ピルにも飲み忘れのリスクがある。

現在、市販薬化の提言が行われているものの、市販薬化はすぐには実現しないと思われるため、「一つの現実的なリスクヘッジ」としては個人輸入によってあらかじめ入手しておくという選択肢もある。価格は1000円~2000円程度。購入手段については「緊急避妊薬 個人輸入」あたりでカリフォルニアマウンテン州のお友達に訊いてみる……もとい、Googleあたりで検索してみると良い。

あくまで、コンドームとの併用で限りなく着床率を下げられる/予期せぬ性交渉などによる妊娠リスクを下げる用途で用いる薬であり、「中出ししてもチャラにできる便利な薬」ではないので、この点注意を。副作用は0ではなく、避妊率100パーセントでもない。

以上から、現実的な避妊手段としては

  • コンドームを使用(不安ならば錠剤タイプの殺精子剤を事前に挿入するという選択肢もある)
  • 破れた・外れたのトラブルに備えて、可能なら個人輸入などで緊急避妊薬を常備しておくのは悪くないと思う。
  • 無い場合は産婦人科に行って処方してもらう。やや高額。
  • 女性側で不安な場合は性側でもアクションしたい場合は殺精子剤の使用や、生理周期の調整なども含めてピルの入手(産婦人科受診)を検討する

このあたりが現実的な対応(及び選択肢)、と頭に置いておくと安心かも。

ピルの服用については、仔細に書かれたサイトが色々あるので、Google先生に頼ってください。 なお、日本のピル情報サイトの草分け的存在、「ピルとのつきあい方」さんでは、現在、日本国内で入手性の低い緊急避妊薬の市販化を求めるキャンペーンをやっておられます。

あとがき

そんなわけで、学校じゃ教えてくれないセックスの基礎知識全三回、でした。 戸惑わずに済むのではないかと。

セックスって、第一に、「最もクリティカルなコミュニケーション」だと思うのです。生き物としての根本に近い行為でありながら、自分も相手も危険に曝す可能性がある。クリティカルなコミュニケーションにおいて、大事なのは「自分を大切にすることと他者を大切にすることはイコールである」「自分を愛することと相手を愛することはイコールになりうる」ということ。 愛する、というのはロマンティックな意味ではなく、もっとシンプルに、相手の存在を認めながらコミュニケーションを破綻させない努力をするということ。 その延長線上に生殖があり、ライフプランがある。そこに『恋愛』と呼ばれる過程があるのかもしれない。ないのかもしれない。 「なるべく傷つけあわずに他者とコミュニケートするための知識を持ちえない」というのは、通常のコミュニケーションへのひとびとの意識にも影響しているのではないか、と思う。

フィクションとロマンとしてのポルノでもなく、ロマンティックイデオロギー的な「ハッピーな恋愛☆」でもなく、医学啓発的な語り口でもなく、問題提起でもなく、ただ現実的な行為としてのセックスについての、実際的な(そして混乱を招かない)知識、というのを、淡々とした切り口でまとめてみたかったのです。それ自体、を我々の性を取り巻く状況への問題提起として。

「ふしだらな」ことではなく、忌むべきものではなく、かといって、ナメクジのように親子のように無条件に相手を受容し合う架空の『ロマンテイックな』行為でもなく、かといって「次世代生産義務」でもなく。どれもこれも極端に過ぎる。でも、今更封建社会に戻れない以上、セックスにまつわる現実は、もっと淡々と、知識として共有されていいのではないか。

そんな意識から書いてみた一連のエントリ、お粗末さまでした。

繰り返すけれど、何かしら、お役に立てば幸いです

セックスの基礎知識(2) セックスのお作法、あるいはセーフティのための留意点

前回: yaya.hatenablog.com

ということで、内容に入っていきます。

ファンタジーではなく、あくまで「セックスにおける現実的な留意点/リスク/想定される問題」を列挙してみました。

概要についてだけなら、当エントリのみでおおよそ把握できるように意識しています。

では、次から。

事前準備と

爪を切る

陰部の傷は治りにくい。裂傷は細菌感染などの危険を増やすと同時に、爪が伸びていると不潔になりやすい。 敏感な場所は爪が当たるだけで痛い。以上の理由から必須。

性病検査

可能な限り初回交渉の前に。 女性がピル等を使用する場合も、検査を受けるまではコンドーム無しの性交は避けたほうが無難。

身支度(清潔第一)

性器周辺はなるべく清潔に。

この場合「清潔」というのは、病気に罹り易い状態を避け、細菌感染に弱い箇所に感染させない留意を、ということです。シャワーを浴びる、ないしウォシュレットで洗っておきましょう。

包茎によるHPV(ヒトパピローマウィルス)感染は陰茎がん、子宮頚がんの原因になる。これはコンドームでも防げない。 口腔内も含め、粘膜周辺は特に、パートナーができたら意識して清潔にしておくほうが色々と安心(現実に、自分の身体を丁寧に扱い、性器周辺の清潔を保つ、というのは結構たいへんなんだけど、つまるところコミュニケーションというのはそういうものなんだと思う)。

事の最中、気をつけたほうがよいこと

コンドームの使い方

ここでは現在最もポピュラーであると思われる、コンドームの使用法と留意点を。

コンドームを使用する場合の留意点

  • コンドームを使用する場合、挿入の直前に装着する。  

 これがわりとわかりやすいと思った f:id:chat_le_fou:20160809212705j:plain

 この画像の出典がわからないので、まずそうだったら差し替えます…  射精したらすぐに抜き取るように。

  • 装着の際、先端の精液溜まり(尖った場所)を性器先端に密着させることを忘れない(破損防止)。
  • 古いコンドームは避ける、また、油性のローションは使わない。コンドームは油に弱いので、破れる可能性がある。
  • 性病の有無が確認できないパートナーとコンドームなしの性交は避けるべき。
  • 外出し、危険日/安全日などは基本的に論外。避妊にはならない。 

失敗した場合、あるいは失敗が不安な場合

  • 装着タイミングのミス、ずれた・外れた破れたなどの事故は起こりうる。
  • どうしても不安な場合、殺精子剤(日本でポピュラーなのは錠剤タイプ)の併用を。
  • ピル+コンドームは、出費や検査の手間はかかるが、避妊法としての確実性は最も高い。
  • 避妊失敗の場合、緊急避妊薬という手段がある。後述。

詳しい使用方法については、このあたりが詳しいかも。 note.chiebukuro.yahoo.co.jp

接触に注意が必要な箇所について

「怪我/病気を避ける」という点で、両性間双方で意識しておいたほうが良さげな所を。

  • 尿道周辺。女性の場合は陰核、男性の場合は先端付近。強く触る/擦ると痛い。
  • 肛門部:性器ではないので、無理やり突っ込めば裂ける。
  • また、重要な点として、『肛門部を触った後に尿道周辺を触ってはいけない』
  • これは、尿道への細菌感染(not性病)を防ぐため。
  • 女性器内部。伸縮性には、行為や相手への慣れと安心度が影響する。血は出ないことも。
  • 子宮口付近。生理周期にも大きく依存し、時期によっては慣れていても負担が大きい。

おそらくもっともカジュアルな感染症、膀胱炎については個別記事をかきました。

セックスの後に

やっぱり清潔が第一

繰り返しますが「清潔」というのは、病気に罹り易い状態を避け、細菌感染に弱い箇所に感染させない、ということです。

体液などはなるべく、その都度処理する。

女性はセックス後、意識してトイレに行く、もっといえば排尿を行ったほうがよい。

これは、性交による細菌感染症(何回も書くけど性病とは別)のリスクを下げるため。

各種リスクについて、留意しておくべきこと

性病、及びHIVについて

  • 男性は排尿痛などの明確な自覚症状があるため問題になりやすいが、女性の場合、症状が軽いため気付きにくい。
  • しかし女性の場合、後々不妊の原因となるため、むしろ長期的なリスクは大きい。
  • また、近年ではクラジミアの感染者が増えており、これに感染するとHIV(所謂エイズ)感染リスクが跳ね上がる。

感染症の多くは、コンドームの着用によってある程度までは防げる。

これは、精液を内性器から物理的にシャットアウトするため。

ただし予防率は100%ではないため、パートナーと共に診断を受けることが望ましい。

そして、HPV(ヒトパピローマウィルス)感染はコンドームでも防げない為、身体は清潔に。

性病検査は(種類は少ないものの)保健所で無料で受けられる。所要時間は30~40分程度。

self-medical.info

ただし受付時間が短いなどの難点があるため、病院で受ける、検査キットを使うなどの方法もある。

妊娠の社会的リスク

  • 至極当然の話として、避妊をせずに男女がセックスをすれば妊娠する可能性がある。
  • 5歳~30代前半の自然妊娠の確率はおよそ25~30%、30代後半での確率は18%、
  • 40代前半での確率は5%、40代後半での確率は1%。
  • また、性交の頻度が高いほど確率は高いとされる。
  • 妊娠・出産に掛かる費用は50万~100万程度。
  • 中絶に掛かるコストは15万円程度、同時に母体に大きな負担が掛かる。

「妊娠」はつまり「子供を持つ」ことと同義となる。

けれど、現在の日本社会では、社会保障の側面で十分にフォローされない、

結果、妊娠・出産の際には当然、経済的にも大きな負担が掛かる。

「実際的な話に」絞ったエントリなので、中絶の倫理的側面、それにまつわる議論については割愛。

細菌感染による疾病について

  • 不衛生なセックスによって起こる、大腸菌などの常在細菌による疾病は、ほぼ女性のみが罹る。
  • その最もたるものが膀胱炎。
  • 自然治癒しづらく、放置すると重症化し、腎臓まで進行すると命に関わる地味に危険な病気。
  • ただし、性交中にパートナー同士が留意しあうことで、ある程度まで回避できる。

女性は性交によって非常に身体を痛めやすいので、パートナーを傷つけないために、男性側の留意は常に必要。

既に書いた通り、性器を清潔にする、行為中に肛門付近を触らない(大腸菌を媒介するため、触る場合は手を洗う・消毒するなどの留意が必要)、性交後の排尿を意識する、以上が主な対策となります。

このあたりの事については、別エントリで書いてみました。

以上。

知っておけばよかった、となりそうなポイントについて、アウトライン重視で書いてみました。

「実際に避妊てどうするんだよ」という話に加えて、

性病や細菌感染症のリスクは地味に大きいんだけど、意識が行きにくいポイントだと思うのです。

次エントリでは、多くの局面で必ず必要となる、避妊の具体的な手段について付記してみます。    

セックスの基礎知識(1) 学校で教えてくれない、セックスについてのこと

やるかやらないかは兎も角、とりあえず知っとく、って大事だと思うんだ。

本稿はいわば『前書き』なので、具体的な内容だけ知りたい人は読み飛ばして(2)からどうぞ。

yaya.hatenablog.com

本題に入る前に。

世間の皆様はセックスに及ぶとき、いったいどうやってるのか。

学校でちゃんと教わった記憶がない。

性器の構造図は見たと思う。でも「どうやって扱うものなのか」知らない。

避妊方法も、確か保健体育の教科書に載ってた。でも、使い方を知らない。

僕らはファンタジーポルノで育った

周知の通り、日本はファンタジーポルノ大国である このエントリは、その事実を批判するものではない。

私は親の本を片っ端から読んでしまう子供で、そういう方面では早熟だったので、小学4年生で『失楽園』を読み、リンダ・ハワードのタイムスリップ物のヒストリカルハーレクインを読み、ドリキャス美少女ゲーム記事で「河原崎家の人々」やら「慟哭、そして…」やらに憧れを抱き(同時期に2ちゃんねるライトノベル板の雑談から田中ロミオ奈須きのこを知り)、高校卒業してエロゲを嗜みはじめるや否や同人文化に肩まで浸かる、気付いたらお世話になっている知人にエロゲ業界の人がやたら多い、という感じで生きてきた。

セックスファンタジーに抵抗はない。むしろ、私にとっては大切な遊び場だった。

しかし、齢106歳も過ぎて何の間違いか恋人ができてしまって愕然としたのである。

セックスってどうやればいいの?

リアルなセックスって何だろう

セクシャルな文化にあれだけ触れて育ったのに、セックスのやり方なんて知らない。

そんな自分に気付いてしまった。

恋人氏は「コンドームは物理的にシャットアウトするものなんだから大丈夫」っていう。大丈夫? ほんとうに?

既に前記事で扱ったけれど、『妊娠』というのは、女性の身体にとって、そしてパートナー同士の人生において重大なリスクだ。『妊娠のタイミングを間違えたら人生が終わる』。なんつっても子供が生まれたら年間150万円の支出。2年間は掛かりきり。下手を打てば貧困まっしぐらなタイトなゲームだ。無計画な妊娠は人生を狂わせる。

そして気付く。

萌え系エロマンガに出てくる女の子は、すぐに「生でいいよ」とか「中はダメ、妊娠しちゃう」って言う。えろ系のまとめブログのバズワードは「膣内射精」。恋人同士ならノーハードルでラブラブ子作りセックス(将来の話なぞしない)、強姦モノは大体が中出し。ライトな萌えエロ漫画ものほどコンドームは使わない。コンドームは上級者向け。

登場人物は高校生。子供ができちゃって大丈夫なの??育てられる???

CLANNADのAfter Storyなんて、高校生で妊娠出産をさせた妻が死に、死んだ妻の親元で暮らすことになった青年の話だ。CLANNADは人生。やだ世知辛い。

「女の子がすぐ喘ぐ」とか「ゴツゴツやっても痛がらない」とか、まぁそういうあたりが『非現実的』と指摘されてるところはよく見るし、それはそれで納得していたのだけれど、気になり始めると、別の部分でもファンタジーに溢れているというか、むしろ、快楽の真髄としてのファンタジー以外のありとあらゆる全てがそぎ落とされているわけで。

気になり始めたらキリがなかった。大丈夫なの? と。

まあ、それはいい。それはいいんです。

参考にできるわけないだろ!

非現実的なセックスの情報は溢れていて、欲望の対象としての身体はメディア上に氾濫している。

このことに、私は反対する立場ではない。

私は性嗜好上、客体としての女性がわりとものすごく好きだ。あらゆるファンタジーは、人間の現実と理想のコンフリクトを緩衝し、人生の質を上げる。ファンタジーポルノも然り。そして、ファンタジーはファンタジーであるからこそ、膨大なコストを要求される人間との性交とは異なり、手軽に『使える』。空想上のポルノは、人がひとりで自らの「性」と向きあうための貴重なリソースでもあると思う。数多のセクシャルなファンタジーに触れて育ったけれど、それでも、私は魔法使いと呼ばれる年齢までひとりで大きくなったわけで、個人の性行動に悪影響があるとは思えない。

ファンタジーポルノのない社会は、ひどく息苦しいのではないかと思う。

でも、それとは別に。

わたしたちは、自分たちの性が現実に於いて葛藤を生まないように、楽しんで、でもセーフティに性交に携わるための段取りを学ぶ機会を皆目与えられていない。

青少年健全育成条例、出版業軽減税率etc……表現規制と「表現の自由」の問題が取りざたされるようになってしばし、一方で、どうもこの世間のフェミニストの皆様は若年者への性教育は、『性の放埓を招く』として白眼視される(そんなことはない、と私は胸を張って言う)。

少子化だ高齢化だ、結婚しろ子供を作れ、性交渉の機会がない男/女は欠陥品だといわれ続けるのに、実際のセックスに際して、文明社会の住人として何をやったらいいのか、ということを知る手段がない、って酷い話だと思う。

どうしたら傷つけあわないで済むのか、ということ

ドヴォーキンの論説を全て否定することもないけれど、ただ一つ、「全てのレイプがセックスである」という言及には否を唱えたい。 生殖活動であり、娯楽でもある。他者と物理的に深い場所で接続される(ある人は『接続されるどころか現象としてはマイナスだとか言っていたけれど)行為を受け入れる、そこに伴うリスクを承諾する。パートナーシップも性交も、本質としては、通常のコミュニケーションの延長線上に存在している。

ただ知ってる、って大事だと思う。

「欲望を発散する行為としてのセックス」と「生殖」、この二つが地続きである事実を、おそらく女性は嫌でも理解している。一方、とくに男性がその「深刻さ」を知る機会が少ない、という体感があります。従来、この社会で、「子供」と「家庭」は女のものだったから。 ある種の女性が何故、性的欲望を向けられることに怯えるのか。セーフティでない性交は女性の心身の健康を著しく損なう可能性があり、当然の帰結として、「子供を孕む」ことで、女性は重大な社会的・健康的リスクを背負うからです。 多くの女性、そしてリスクの重さを認識できてしまった男性において、「傷つかない」「極力リスクを回避する」手段から遠ざけられているために、現実の性交、あるいは、次世代生産をめぐるあらゆる事象が忌避の対象となるケースも多いように感じる。

男性も女性も、傷つかない傷つけないセックスのやり方、というのを、知る機会が限りなく少ない。 自分と相手の事情を無視して強引に及べば、互いが深く傷つく可能性がある。セックスというのはそういうもの。 けれど、正しくリスク回避できたら、セックスは「ただのコミュニケーション」になる。 そういう風に、ニュートラルに捉えるために、何よりも私たちには「知識」が必要なのでは?

ということで、この記事です。

個人的に調べて・把握した範囲で、「セックスの基礎知識」をまとめてみました。

主として異性間のセックス(特に避妊とリスク回避)について解説していますが、多種多様な性愛の形態を排斥する意図はありません。ぶっちゃけ、ムリして子供を作る必要も、恋愛する必要もないと思う。けれど、生殖機能は紛れもない我々の身体の一部であり、人生観を形作るものです。それを忌避する、「穢れ」のように扱う、というのが果たして幸福な社会なのか、という疑問は常にあります。

また、性嗜好が現実の他者に向かない人々を排斥するものではありません。ただ、そういった人々も、社会的な理由から、異性とのパートナーシップを選択する可能性はありますし、異性が好きなひともそうでもない人も、「生殖」が重大なトピックであるこの社会で生きることだけは避けられないわけで、「そういうものなのか」と、フラットに現実と向き合うために活用頂けたら幸いです。

ではどうぞ。

シン・ゴジラ見てきた

LUNATICO » シン・ゴジラ感想

自ブログのほうでシン・ゴジラ感想を書きました。なまら暑苦しい。 迷ったんだけど、サブカルネタは従来通りあっちでやるかなあ、という感じで。

「上方婚志向」という幻想:1 日本における「上昇婚」をどう定義すべきか

Twitter男女問題界隈で頻繁に見る、「上昇婚」という単語。

・ ・ ・

これらの論説は凡そ、「女性は習性として上方婚を行うものであり」「ゆえに日本の女性は配偶者選定に行き詰まる」「これが少子化の原因である」といったロジックによって語られています。

togetter.com

あるいは、

「男女平等が少子化を推し進める」「女性の上昇婚志向は少子化の原因である」や「女性の収入増は婚姻率をむしろ低下させうる」

といったもの。こういった言説では当たり前のように、「女性の上昇婚志向」が語られます。

その根拠とされているのはかなり多くの場合、「女性は収入の高い男性としか結婚しないから」というものです。 個人的に、この論点に対して3点、疑問を持っていました。

  • 日本は性役割分業が根強く残る社会であり、男女に深刻な賃金格差がある。また、子供を持つことを「権利」と捉える未婚男性は散見されるものの、多くの女性にとって、出産は自分の人生の時間と労力を割かれる「義務」である。いまの日本社会において、女性は育児・出産の機会コストを配偶者に頼らざるをえない現実がある、この点を無視して、「女性特有の行動傾向」や「選り好み」が原因であるかのように語るのは如何なものか。

  • 一方で、上記の理由を踏まえても、年収300万円以下の男性は結婚できないという実際のデータがあり、そして、女性が配偶対象を選ぶとき、経済力に一定の基準を設ける傾向があるのは事実である。この傾向を裏付ける科学的背景は存在するのか。そして、これらの行動傾向は、女性という主体の、嗜好選択の問題、解体不可能なものであると断じて良いのか。あるいは、解体手段は存在しないのか。

加えて、女性の(根本的な行動原理、あるいは「本能」としての)「上昇婚」の社会的実態というのは存在しているのか。そしてそれは少子化にどの程度寄与しているのか、以上が、ここから一連のエントリーの趣旨です。

なお、この記事はこの記事承前部を加筆したものとなります。 始めて読まれる方は、こちら(これ。こっちの記事)を先にお読み下さい。

『上昇婚』とは何か

どうも「女性の高望み」の言い換えとして使われているフシのある「上昇婚」というタームですが、本来の定義としては

じょうしょうこん hypergamy 花婿とその親族の世襲身分が花嫁のそれより高い婚姻のこと。この逆を下降婚 hypogamyという。すなわち社会的に是認されたカースト外婚をいう。 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

ということになります。 つまり、厳格な身分社会での、下位カーストの女性と上位カーストの男性と婚姻を指す言葉です。 本来は非常に限定的な社会学タームですが、ネット言論界隈で頻用されるようになった経緯としては、以下の本の存在が大きいようです。

山田昌弘氏のこの本は、1990年代当時、大きなインパクトを持っていたようです。 なお、この方は、白河桃子氏とともに「婚活」「パラサイト・シングル」というタームの提案者でもあり、ネット論壇界隈に限らず、日本国内の男女論・格差議論などにおいて、強い影響が見て取れます。

さて、この本における、ハイパーガミー(女子上昇婚)の定義はP.68に初出。

妻が夫の家に入る嫁取り婚を原則とする社会では、女性にとっての結婚はまさに「生まれ変わり」である。それゆえ、女性はよりよく生まれ変わるために、自分の父と同等以上の家の男性と結婚する。 それゆえ、女性は、よりよく生まれ変わるために、自分の父親と同等以上の家の男性と結婚する。それに対して、男性は、結婚によって、結婚によって、身分、階層、職業などは変わらない。このような結婚制度を「ハイパーガミー(女性の上昇婚)」と呼ぶ。

これは、一見すると非常にもっともらしい指摘に見えます。

女性にとって結婚が「生まれ変わり」の機会でありうる。「ゼクシィ」などの結婚情報誌は華やかな結婚に憧れる女性を対象とするものであり、逆説的には、「結婚に憧れる」女性がこの社会に一定数存在する、ということを示します。この感覚は、結婚がむしろキャリア継続及び収入上昇の手段となる男性とは、大きく異なるものでしょう。

この本の主張の一部は、「女性は、よりよく生まれ変わるために『上昇婚』を行う」という因果関係を前提として書かれています。しかし、「結婚が(結果として)女性に生まれ変わりの機会となる」ことと、「女性が、生まれ変わりの機会を得るために配偶者の選定を行う」ことは、第一にイコールではありません。ここについては特に考察がなく、出典も提示されていません。やや根拠が薄弱です。

とはいえ、この本がインターネット上の男女論のタネ本として大きな影響力を持っているであろう点を踏まえなくとも、同著にあるとおり、女性の父親と夫の学歴と収入を基準に、上昇が見られるケースを「上昇婚」とみなす、という定義は凡そ妥当と考えます。山田氏が同著P.45で指摘している通り、性役割分業の未だ強固なこの社会において、女性の身分が、本人の社会的役割以上に、ーーーの娘、ーーーの妻、ーーーの母として定義される局面は非常に多いからです。

続いてP.69

社会が近代化され、職業の世襲が原則としてなくなり、停滞経済から成長経済へと移行すると、男性にも「階級上昇」のチャンスが出てくる。……階級の低い男性(特に次男以下)にも、自力で階層を上昇させて、妻をめとる可能性がもたらされた。 特に、第二次世界大戦以後の高度経済成長期は、この条件に恵まれていた。終戦直後、戦死による男性不足から、一時的に女性の結婚難が見られたが、高度成長期には、男女とも早婚かつ皆婚状況が出現する。

高度成長期に、国内の男性全般に身分の転移が見られた、このころは親元で第一次産業就業者を務め、嫁入りしえ一生を終える人生が主であった女性にとって、労働者に「階級上昇した」男性との婚姻は階級移動となった、ゆえに婚姻が非常に魅力的なものであったーーーーこの指摘自体は妥当と言えるかもしれません。

しかし、実際には、戦後最大の出生率を叩き出した第一次ベビーブームは1947年に起こっており、そして、高度経済成長が終わり、男性の最終学歴の上昇が止まる1970年代後半より前に、婚姻率は低迷を始めています。

ガベージニュースさんから引用、戦後の出生率推移。

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ある経済コンサルトの日記さんから、日本のGDP推移。

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高度経済成長期の間に上昇していること自体は事実ですが、経済成長に伴うゆるやかなものであり、第二次ベビーブームが起こる前に婚姻率は下降しています。高度経済成長期の経済成長とはまったく同期しないその後は経済成長に同期してゆるやかに同期している、と捉えたほうが自然でしょう。 また、一人あたりGDP、「身分の転移」の要因となる第一次産業就業者と第二次・第三次産業就業者の推移についても、実は婚姻率の変化とは特に同期していないのです。第二次ベビーブームは、第一次ベビーブームで出生した(=人口の多い)世代によるものであり、合計特殊出生率の増加を伴いません。なお、合計特殊出生率は、第一次ベビーブームを最後に、一気に低迷しています。

日本リサーチ研究所作成のグラフより。

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「親の学歴」についてですが、内閣府男女共同参画局のデータによれば、男性・女性ともに、大学進学率は1975年ごろまでほぼ一定して上昇を続けています。

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ここに強い相関があるならば「親と子の学歴差」における上昇傾向が止まるのは、およそ80年代から90年代になるはずですが、婚姻率の推移は実際には1970年代前半、第二次ベビーブームを最後に低迷に転じており、同調しません。 ゆえに、上昇婚が不可能になったことが、低成長期の婚姻率低迷の主原因であるとする山田氏の分析は事実に即しない、あるいは即していても、より大きな要因があるのでは、という疑問が出てきますが、本項の主旨から外れるため、一旦脇に置くことにします。

「生まれ変わり」を動機とする、という仮説を採用するかはとかくして、「社会的地位の転移(上昇、下降の場合は下方/下降婚)」を基準とするのは、本来の定義から考えると妥当でしょう。日本はカースト社会ではありませんが、資本主義社会の宿命として、社会格差そのものは存在しているからです。

それでは、実際に、現在の日本における女性の配偶者選定は、どのような基準で行われているのでしょうか。

そもそも、日本の結婚の主流は同類婚である

同じく、少子化問題と婚姻率低下の問題を多く扱った本として、「夫婦格差社会」があります。

夫婦格差社会 - 二極化する結婚のかたち (中公新書)

夫婦格差社会 - 二極化する結婚のかたち (中公新書)

インターネットにおける議論で、「上昇婚」と一緒に取り沙汰されがちな「パワーカップル」「ウィークカップル」といったタームや、婚姻傾向に伴う格差にまつわる議論の出処はこの本である、という推測でおそらく間違いないものと考えられます。

同著では、一夫一婦制においての選定行動の基準として、「相補」「類似」2点を仮説として提示しています(P.41)。前者は上昇/下降婚的、後者は同類婚的と言えますが、「すべてにおいて相補的であったり、類似的であるのではなく、各変数において相補的になったり、類似的になったりしているのではないか」、というのが同著の指摘です。 また、離婚・晩婚・未婚へ至る理由として、加藤彰彦氏の「[未婚化・晩婚化と社会経済的状況(2004)]」から、「女性自立仮説」と「相対所得仮説」と「つり合い婚仮説」の三つの仮説を提示しています(P.42-)。 相対所得仮説は、結婚が「期待する生活水準」に対する稼得能力を推進するのであれば後押しするが、既存の結婚の停止を後押しすることもあり、悪化が予測されれば晩婚化を促進する、というもの。つり合い婚仮説は、結婚相手のマッチングそのものの困難性に着目するものです。 加藤氏は、日本国内の状況として、経済学的分析により、「女性自立仮説」を不支持、「相対所得仮説」を部分的支持、「つりあい婚仮説」を支持とする研究結果を示しています。

これらの前提を踏まえて同著で扱っているのは、「上昇婚」ではなく、既婚者にはむしろ同類婚、法曹、医師、研究者といった同業者どうしのカップル=パワーカップルと、年収300万円以下、200万円以下の低所得男女によるカップル=ウィークカップルです。現在の日本で、学歴・職業を指標にした場合、近い学歴、あるいは同じ職業の男女が夫婦になる割合が高いことが指摘されます。

学歴と、職業から見る「同類婚志向」

「夫婦格差社会」では、高卒の男性と高卒の女性、大卒の男性と大卒の女性の婚姻率の高さから、日本はいまだ同類婚が主流であるとしています。(P.67) ここでは総数だと女性のほうが学歴の低いカップルも多い、という調査結果も提示されいますが(同頁)、中卒の男性の50%が高卒の女性と、33%が中卒の女性と結婚しているというデータもあるため、これは単純に、女性の進学率のほうが男性の進学率より低いことの反映(同著における分析)と捉えて問題ないでしょう。

小林淑恵氏による、「学歴下方婚のすすめー類型選択と実現された生活(2006)」より。

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男性のほうが女性よりも学歴が高い場合の結婚を「伝統婚」、逆に女性のほうが学歴 が高い場合の結婚を「非伝統婚」と定義してのグラフです。なお、この研究では、大卒女性で伝統婚を選ぶのがわずか10%に過ぎないどころが、24%、4人に1人は非伝統婚を選択することを提示した上で、以下のように分析しています。

女性がより高い学歴の男性との結婚を望んでいるという上方婚志向の認識は、マクロの視点による 階層論の結果と、高学歴男性の実感によるものであろう。自分の同級生は皆、同じ大学卒かそれ以 下の学歴の女性と結婚しているため、下方婚を選ぶ大卒女性が実数として多いことを見逃しているのではないだろうか。

上述の夫婦格差社会P.73にも指摘と分析があります。男女の大学進学率に格差があるために、夫側から見た女性の最終学歴が下方婚にばらつきを見せる一方で、妻側から見た男性の最終学歴がほぼ同類婚で固められる。ゆえに男性から見ると下方婚を選ぶ女性の多さが認識できない、というものです。

ここで挙げたふたつの研究では夫婦間の学歴差が「階級移動」の基準として扱われていますが、すくなくとも近年この国では学歴は年代を通じて一貫して本人学歴に影響を与えている(2006,安藤理)という研究結果があります。加えて世代間での階級上昇を生む最終学歴の上昇は1970年代に上がり止まっていることからも(前出のグラフより)、父学歴と本人学歴を同じく「階級」の指標として扱っても、戦後〜実態としてはそれほど大きな差は出ない、と推測して問題ないでしょう。

また、学歴以外の「階級」のファクターとして、職業があります。

「夫婦格差社会」では、「妻が事務職の場合を除いた残りのすべてで、夫が同じ職業に就いている場合が高」く、「その率が最も高い」こと、「妻がどのような職業に就いているか」が収入のバロメーターとなっていることも指摘されています(資料として厚生労働省人口動態職業〜産業別統計が掲載されていたため、同様のものをここにも載せておきます)。

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ここでも、優勢なのは同類婚です。

印象論はともかく、少なくともデータ上の実態としては、学歴や職業に着眼する場合、この国の女性全体の「上昇婚志向」は希薄であり、今現在も同類婚志向の強い社会であると表現する正確である、と言えるでしょう。 現在は高学歴女性、高収入キャリア女性ともに男性に比べれば圧倒的に少ないのが実情であり、見かけ上の下方婚の成立しづらさは、単純に数の少なさに拠る部分が非常に高いと考えられます。

とはいえ、経済力を指標とする場合、既婚男性・既婚女性の収入に大きな格差が存在しているのは事実であり、同時に、高収入女性よりも高収入男性のほうが割合としては既婚率が高いのも事実です。また、同類婚が優位であり、上昇婚が低比率であるとしても、「下方婚が(同類婚に比べれば)成立しづらい」事実は揺らぎません。 次の項では、実際の収入に着目した場合、女性がどのような結婚行動を取っているのか、男女の平均収入や、結婚相手の希望年収データを元に見てみます。

ふわふわした語りで恐縮ですが、次エントリに続きます。

yaya.hatenablog.com

他、今回のタネ本など

「婚活」現象の社会学 日本の配偶者選択のいま

「婚活」現象の社会学 日本の配偶者選択のいま

セックス格差社会 恋愛貧者 結婚難民はなぜ増えるのか?  (宝島社新書)

セックス格差社会 恋愛貧者 結婚難民はなぜ増えるのか? (宝島社新書)

「上昇婚志向」という幻想 2:希望年収500万円以上&結婚可能年収300万円ボーダーは「上昇婚志向」ではない

(追記) 資料不足で書きかけになっていた、承前部を加筆しました。 こちらを先にお読みいただけると幸いです。

yaya.hatenablog.com

前項の要約と本項の主旨について

かつて山田昌弘氏が著書において女性の『上昇婚志向』として定義した現象は、 「女性は社会的地位、生活環境の変動(生まれ変わり)を目的として、経済力の高い婚姻相手を選定しようとする」というものです。

現在の日本女性の行動傾向は、果たしてそれに当てはまっているのか、学歴・職業の観点から分析する場合、「日本はむしろ同類婚が主流の社会であり、下方婚の希少性は、むしろ高学歴・高収入女性が男性に比して少ないことによる」という現実が見てとれます。

しかし、既婚男女間の経済格差、そして高収入女性の既婚率の低さなどは、現実の数字として存在しています。 なぜこれらが生じるのか、という点を、男女の平均収入や就業状況、結婚によって生じる出産・育児のコストを概算することで考察してみよう、というのが本エントリの主旨です。

「年収300万円ボーダー」の妥当性

少子化をめぐる議論や、「男性差別」の象徴としてよく言われるものの一つに、 「男性は年収300万円が結婚の分岐点となる」という話があります。

www.nenshuu.net

年収300万円未満で9.6%、年収300万円~400万円で26.5% この数字を、出産・育児の現実性という観点で検証してみます。

子供を20年間養育するのに必要な費用ですが、 生活費と教育費を合わせると、実に、約3,000万(大学まで公立校の場合)という試算があります。両親が育児に携わる間、就労できなくなる分の損害を計上しなくとも、ざっくりと一年で150万円の出費です。

cocomammy.com

平均24年度の男女平均年収のデータによれば、見るならば、20代前半男性の平均年収が260万円、女性が224万円。現在、社会人の生活費平均が月18万円という話があるので、とりあえずこれを前提にしてみます。年間216万円。 男女それぞれの生活費を取り合えず200万円で計算して、ここに150万円を加えると、年間に必要な生活費は550万円となります。これがおそらく、出産後もいまの社会人一般の「中流」クラスの生活を維持するのに必要な金額です(ものすごい概算ですが)。

現在、8割強の女性は「結婚後もキャリアを継続したい」と望んでおり、現実に、7割は再就職しているわけですが、女性側の平均年収は20代後半の297万円で上がり止まります。加えて、少なくとも子供が小学生に入るまでの6年程度は、男親・女親どちらかの収入が大きく減ることになる。産休・幾休中の手当てが5~7割とのことなので、概算5~7割でしょうか。

既に各所で考察されている事実ですが、女性の生涯年収は、出産・退職者の存在により、平均300万円前後で固定されます。

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なお、バリュー層は上の統計にある通り、年収100万円以上、200万円以下の26.2%です。 400万円代を越える女性の割合は23%と非常に希少ですが、この層が平均年収を引き上げています。

上昇を望めない。それどころか出産、そして育児に従事する間の収入は減少する。 300万円という数字には、キャリア中断を回避して年収を維持した、所謂「バリキャリ女性」も含まれるため、出産して非正規就業者に移行した女性の収入は、現実にはもっと低い、ということは推測可能であり、実際、女性の年収のバリュー層は200万円以下であるわけです。

つまり、「男性は年収300万円で足切り」というのは、女性側の平均年収300万円と合算した場ですら、不平等でもなんでもなく、「片働きではまず出産は無理、共働きでも生活レベルを下げないと厳しい」ぎりぎりのボーダーラインです。そして、この層の女性が全体の7割。 年収300万円ボーダーを下回ると、貧困に陥らない「中流」生活の維持はほぼ不可能と推測され、しかも、ここまでの試算には、介護や子供の重度障害や傷病などの想定は含まれません。

wadainoare.com

中流階級の男女が、生活レベルの低下をある程度まで受け入れつつ、結婚後もギリギリ生活を維持するのに必要な男性側の年収ボーダーが300万円」と判断しておよそ間違いないと見ます。

「希望年収500万円以上」を『上昇婚志向』と呼べるのか?

全国に結婚式場を展開するアニヴェルセルによる、結婚相手に求める年収についての意識調査。 http://www.anniversaire.co.jp/brand/pr/soken1/report19.html

女性のトップは500万円以上。「非現実的」と揶揄されがちな数字で、実際、20~30代の平均年収を大きく上回ります。 また、男性は女性の経済状況を考慮しない傾向が高く(上記調査からも読み取れますが、平成25年版厚生労働白書(図2-2-34)などでも実証されています)、これらの事実は、女性の「上昇婚志向」の根拠として持ち出されることが多いようです。

しかしここで、角度を変えてみましょう。

「男性年収300万円、女性収入300万円以下」が、現実的な婚姻成立のボーダーラインとなっている、というのが先の考察でした。 さて、男性の収入が500万円、女性の収入が統計におけるバリュー層であったケースを想定します。世帯収入は800万円です。育児・出産の機会リスクにより、実際はこれより低くなると見込まれます。

最終的な世帯年収として800万円前後が見込める(見込めなくもない)、というのは、最低4000万円、最多で6000万円は掛かるとされる、私立学校への進学が可能となるラインです。家計に余裕があれば、傷病リスクへの対応も容易になり、また、非認可の保育施設など、各種サービスの使用も選択肢に入ってくる。

前述の「男性年収300万円以上、世帯年収200万円以上」が「共働きの維持と生活レベルの低下」によって補填可能なボーダーラインだとすれば、「500万円以上」という数字は、配偶者にほぼそのまま育児分の経済負担と、キャリア中断や育児への従事による損害を被せる、リスクをできる限り除外した場合、むしろ現実に即した数字なのです。

先ほども出したデータですが、年収400万円以上の女性は2割程度です。

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国税庁 平成26年 民間給与実態統計調査結果より

それも含めて考えると、「(希望は)500万円以上」ゾーンは、現状の生活レベルの維持を求める層であり、ここが4割弱と言えます。 加えて、「300万円以上」ゾーンに、「結婚・出産のリスクが生活に反映されても構わない」あるいは「自分のキャリアの範囲内で補填可能である」と考える女性が、合わせて3割程度は存在している。ここまでで過半数です。 これはあくまで結婚前の調査なので、不景気の現在、実際の結婚行動においては、より柔軟な判断が行われている可能性も見込まれます。

かつて、「結婚の社会学」において『上昇婚志向』として定義されたのは、「生活環境の変化のために婚姻を利用する」女性の行動傾向でした。 しかし、現在の一連のデータから読み取れるのは、過半数の女性は、結婚・出産後も変わらない生活を維持できる社会階層の異性との結婚を望んでいるに過ぎない、という事実です。この傾向を「上昇婚志向」と呼ぶのは、果たして適切でしょうか?

とはいえ

現在、男性の年間平均給与のボリュームゾーンは400万円~500万円であり、 年収300万円以下の男性が全体の24%。 年収500万円以下で総数の72.7%です。下記参照。足しました。 f:id:chat_le_fou:20160503144525p:plain

しかも、年収300万円以下の男性は年々増えている。

f:id:chat_le_fou:20160503144554p:plain 国税庁民間給与実態統計調査」年収ガイドより

そもそも、現在の出産・育児への支援が不十分な社会条件下にあって、 『子供を持つことが贅沢』に等しいのだ、ということは一応書いておきます。 現在の日本社会においては、出産においてキャリア中断される女性の収入は低く、 一方で、出産・育児のコストは年々上がっている。 各々が現実的な判断を行った結果として、男性側が求められるハードル、というのがそもそも高い。

男性が(現実的視点から)「配偶者の経済状況を問わない」と言いきるには、 年収500万円、ないし600万円は必要です。 にも関わらず、先のアニヴェルセルの調査では、半数の男性が「好きになったら収入は関係ない」と回答しています。

男性の低収入化も進む現在、男性側が結婚相手の選定に際し、「経済状況を考慮していない」状況が むしろ不自然である、と指摘せざるを得ません。

余談:高収入女性の、結婚における選択肢

Twitter論壇でよく見るこのあたりの話

togetter.com

についても、軽く触れておきます。 この手の話でよく見る主張は、「女性には上昇婚の傾向があるから、低収入男性を選ばない」というものです。 実際、まとめのコメントでも同種の主張が繰り返しなされています。

例えば女性の『上昇婚』を前提としたこの記事ですが

KYの雑記ログ - 男女平等、格差対策、少子化対策のトリレンマ

ここでも、「医師、テニュア持ちの研究者、士業の女性でも自分より年収の高い男性としか結婚したがらず」と記述されており、これもまた、「日本人女性は上昇婚志向が強い」説の、有力な前提の一つとして扱われています。

実際はどうなのか。

この場では一応、さらに別の資料を引っ張り出してみます。

woman.president.jp

このあたりの記事を見るあたり(厳格な統計データがあるわけではないですが)、 出産・育児を経てもキャリアを継続したい、男性と同じ勤務状況を維持したい女性の選択肢は

  • 年収1000万円以上の、共同生活において家事育児労働のアウトソーシングが可能な男性

  • 年収300万円代の、家事育児労働を委託できる男性

となるようです。所謂「主夫業」前提に、女性側の生活レベルをある程度まで下げる前提で分業(ある意味で『雇用』かもしれない)するか、双方の生活レベルや就業状況を維持したまま全てアウトソーシングするかで二極化する。

家事育児労働のアウトソーシングコストや所得税率、男女の職業意識なんかの各種要素を加味したとき、上記の記事は妥当というか「現実的にはこうなる」的な落としどころなのかなという気はします。バリキャリ、つまり「年収600万円以上の女性」は、全体の5.2%しか存在しません。バリキャリ女性は男性ほど天井が高くない上、絶対数が少ない。「女性が男性を養う」という状況がまず成立しづらく、次に、その状況を成立させるための社会的条件が非常にタイトで、ずば抜けた経済力か、配偶者の理解と協力のどちらかを必要とする。

なお、統計データではありませんが、高学歴女性と低収入男性の現実的な婚姻の例として、 「愛は技術」などの著者である川崎貴子さんと、ダンサーであるマサヒロさんの対談があります。

p-dress.jp

「相手が経営者じゃダメ! 横文字の職業の人を探せ!」とみんながみんな同じことを言うんです。 一つには、最初の結婚は経営者同士でライバルのようになってしまってうまくいかなくなったこと。もう一つは、横文字の職業の人なら、当時の私の「女社長」という肩書きに頓着しないだろうと。夫と出会う前にサラリーマンの男性とデートしたのですが、「無理です!」と10回ぐらい言われました(笑)。

まとめます。

バリキャリ女性のモデルでは、「キャリアの維持・継続」を前提に婚姻相手を選ぶ結果、相手の収入が二極化する。その片側に、超収入層の男性が配置される、ということができる。この傾向が正であるとすると、婚姻対象の年収の二極化も「現状維持」を求めた結果であり、これも、社会的地位の変動が前提として含まれる、既存の「上昇婚」の定義に当てはまりません。

「日本人女性の上昇婚志向」とは

結婚すると、キャリア中断により年収の固定を余儀なくされる平均年収前後の女性が「上昇」婚を行うには、 結婚相手の年収は、「生活レベルを落とさない」基準の500万円台より「かなり高い」必要があります。 しかし、実際のデータでは500万円台が上がり止まりで、700万円以上希望となるとガクっと下がります。 出産を経ても、極端な生活レベルの低下が起きない、が、日本人女性の過半数の求める「結婚相手の収入」条件だと言えます。

また、キャリア継続を目的とする年収の高い女性(=バリキャリ女性)の結婚相手についても、 極端な高収入と低収入の二パターンが指摘されますが、あくまで「キャリア継続と育児・出産の両立」という現実条件があり、 これも「社会的身分の上昇を目的として、経済力の高い相手を選ぶ」という定義には一致しません。

日本人女性の、結婚条件としての収入による男性の選定は、「社会的身分の上昇」よりも、 むしろ「育児出産の現実性」「現状維持」の観点から行われている可能性が高い、と仮説が立てられます。

故に、ハイパーガミー本来の定義(女性側の社会的地位の上昇・移動を含む婚姻行動)を考慮する場合、 収入に大きな男女格差が存在する現在の社会において、 女性が一定以上の年収男性を結婚相手として希望する統計的傾向が見られる事実を、 「上昇婚傾向」とは言い切るのは乱暴であり適さない。

一部で「上昇婚傾向」と称される現象が 「女性全般の行動傾向」ではなく、単純な男女格差、出産・育児の機会コストの反映であり、 過半数以上の女性が、結婚・出産後の生活レベルの維持を求めて結婚相手を選んでおり、 結果として婚姻率が低下しているのであれば、 少子化傾向の対策としては、純粋に、それら各分野に対するアプローチが必要になるはずです。

実際、日本の完結出世児数は、1970年代の2.2人から現在の1.9人まで、 から0.3ポイント程度しか変化していません。

「婚姻率が低下したから、出生率が下がった」のではなく、

「産める夫婦しか結婚しないため、婚姻率、合計特殊出生率の双方が一緒に下がっている」

と、理解したほうが自然です。

前出のまとめ記事でも散見されますが、この前提を踏まえれば、 「男女平等が少子化を推し進める」「女性の上昇婚志向は少子化の原因である」や「女性の収入増は婚姻率をむしろ低下させうる」といった、因果関係を取り違えた提言は事実に即さない、と言えるのではないでしょうか。

女性の就業率上昇は少子化を促進する、は正か?

なお、上記引用したterrakei氏のpostへのレスポンスの更なる引用ですが、

女性の就業状況が改善した2005年から、合計特殊出生率はむしろ上昇している、というデータがあります。

そして、以下の資料。

www.rieti.go.jp

<結果(1)>

女性の労働力参加率の高さは、OECD諸国平均で、依然として低い出生率と結びついている。

<結果(2)>

仕事と家庭の両立度が高いと、出生率は増加する。

<結果(3)>

女性の労働力参加率増加の出生への負の影響は、仕事と家庭の両立度が高いほど減少し、両立度が十分高ければ効果は0になる。

<結果(4)>

1980年以前から女性の労働力参加率が既に高かったOECD諸国において、仕事と家庭の両立度は現在高いが、 一方、女性の労働力参加率が>1980年以降に増大した他の国における両立度は、現在も比較的低い。

この資料に基づくならば、仕事と家庭の両立度が0に近づくことで、女性の社会進出の、出生率への影響は観測されなくなる。現在少子化に苦しんでいる日本、韓国、イタリアなどは、結果(4)の後者に該当します。

まとめ

  • 日本人女性が「より高い社会的地位や、生活を求めて配偶者を選んでいる」というような統計上の事実はない。

  • 少子化の原因は、単純な若者世代の収入減と、それに対して高すぎる出産・育児のコストであると想定される。

  • 女性の社会進出が実現した社会では、出産・育児の機会コストの存在により、一時的に出生率が低下するが、

  • 仕事と家庭の両立を可能にする社会福祉施策が十分であれば、コストは0に近づく。

  • むしろ、女性の労働力参加率の上昇は出生率の増加に寄与しうるというデータがある。

以上を踏まえたとき、少子化をめぐる状況を、実質的には存在しないと言って過言でない「上昇婚志向」を前提に論じるのは、現実的ではない、ということで良いと考えます。

何かとふわふわした話で恐縮ですが、次項に続きます。

「婚活」現象の社会学 日本の配偶者選択のいま

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セックス格差社会 恋愛貧者 結婚難民はなぜ増えるのか?  (宝島社新書)

セックス格差社会 恋愛貧者 結婚難民はなぜ増えるのか? (宝島社新書)