まっしろな嘘

ニンゲンを勉強中のヤヤネヒによる、なんかいろいろ。

セックスの基礎知識(3) コンドーム以外の避妊法について、及び、緊急避妊について。

前回→ yaya.hatenablog.com

前回はコンドームの使用するケースを中心に解説しました。 現状、世間的には「とりあえずコンドームを使えば安心」みたいな風潮があるわけですが、一歩突っ込んで知ろうとすると「選択肢が多すぎてわかりにくい」「コンドームを使ったときの避妊失敗についての情報が不十分である」などの問題があるように感じています。少なくとも、わたし自身はこの点、非常ーに不安だった。

「こうすればある程度は(※)安心だよ」という、わかりやすいアウトラインが欲しい。 そのへんの需要を意識してかいてみる。

いろいろな避妊手段

詳しく説明すると長いので、避妊手段の仔細についてはこのあたりを参考に。

www.hinin-style.jp

一般的には

「メインはコンドームorピル(もしくは併用)」。 ただしコンドームには脱落の危険が、ピルには呑み忘れの危険がある。 これに併せて、リスク回避や経済事情を考慮して検討、といった感じが現実的。

コンドーム

男性器に被せて物理的に精液の接触を防ぐ。現在、日本では主流の避妊法。コンビニ・薬局など、安価で入手性が高い。

ピル

卵胞ホルモンと黄体ホルモンを含む製剤を服用することで擬似的な妊娠状態を作り出し、着床を防ぐ。21日服用し、7日休むことで生理周期を固定する。そのため、月経困難などの治療で保険適応が可能。血栓症などのリスクはあるが、第一世代、第二世代と低容量で使用できるにつれ、副作用は軽減されている。体質的な相性も大きい。

IUS(ミレーナ/子宮内避妊システム)

黄体ホルモンを持続的に放出するプラスチック製の小さな器具を子宮内に入れて妊娠を防ぐ。出産経験者向き。

精子剤(フィルム・ゼリー・錠剤)

薬剤を膣内に挿入して精子を殺す。流れ出てしまう危険性、アレルギーの可能性などもあり、主流ではない。 多くの産婦人科などでは「あくまでも補足するための避妊法」として勧められることが多い。

リズム法

月経周期や基礎体温の変化から排卵日を予測し、その間の性交を避ける。いわゆる「安全日」「危険日」。 これに頼る若年者は多いが、実際には、確実性が非常に低い。 むしろ「妊娠を望むとき、確実性を上げる手段」と捉えるべき。

リスクヘッジとしての緊急避妊

何故必要なのか

現在主流となってる避妊法はコンドームで、入手性が高いのもコンドーム。

けれど、「コンドームは一定確率で避妊失敗する」。

原始的な方法であるが故に確実だけれど、前項で述べたようにずれる・はずれる・空気抜きの失敗などの事故の可能性は除外できない。

そんなときのために「緊急避妊薬」という手段があります。 現在は(原則)、産婦人科で処方を受ける必要があります。

緊急避妊について

「避妊具での避妊に失敗した」または「ピルを飲み忘れた」というケースの為に、緊急避妊法が確立されている。あと、このエントリの趣旨から若干外れるが、レイプされた等の理由で不可抗力的に無防備な性交に及ばされた際にも利用される。

性交に及ぶ場合、およそ必須の知識と言ってよい。

緊急避妊薬って具体的にどういうもの?

  • 緊急の手段として、子宮内に器具を挿入する避妊法と薬品を使うものがある。前者はほぼ使われない。
  • 薬品を用いた避妊手段は二種類ある。 *「通常量の四倍のピルを服用する方法(ヤッペ法)」と、緊急避妊薬を服用する方法がある。
  • 前者は副作用が大きいため、後者が主流。これが一部で話題になっている、ノルレボと呼ばれる緊急避妊薬
  • これは、現在、産婦人科でしか処方されない。処方薬で15000円程度、診察料込みで20000円~25000円程度。
  • そのため、日本国内では入手ハードルが高い。手元にない場合は産婦人科へ。

ノルレボの使用法について

  • 性交渉から72時間以内の服用。
  • 早く服用すればするほど妊娠確率を下げる。
  • 次の生理を待って妊娠検査キットを使い、反応しなければ避妊成功。
  • 120時間以内なら一定の効果が期待できるが、100パーセントではない(8%~2%程度まで下げる)

『お守り』としての緊急避妊薬

ノルレボは結果が確認できるまで時間がかかることに加え、ホルモン製剤であることに違いはなく、女性の身体への負担は(旧来の方法に比較すれば少ないとは言え)ゼロではない。そのため、常用はあまりにもリスクが大きい。平常時は従来どおりのコンドーム、ピル、殺精子剤などの使用が現実的。ただ、コンドームには避妊失敗のリスクが、ピルにも飲み忘れのリスクがある。

現在、市販薬化の提言が行われているものの、市販薬化はすぐには実現しないと思われるため、「一つの現実的なリスクヘッジ」としては個人輸入によってあらかじめ入手しておくという選択肢もある。価格は1000円~2000円程度。購入手段については「緊急避妊薬 個人輸入」あたりでカリフォルニアマウンテン州のお友達に訊いてみる……もとい、Googleあたりで検索してみると良い。

あくまで、コンドームとの併用で限りなく着床率を下げられる/予期せぬ性交渉などによる妊娠リスクを下げる用途で用いる薬であり、「中出ししてもチャラにできる便利な薬」ではないので、この点注意を。副作用は0ではなく、避妊率100パーセントでもない。

以上から、現実的な避妊手段としては

  • コンドームを使用(不安ならば錠剤タイプの殺精子剤を事前に挿入するという選択肢もある)
  • 破れた・外れたのトラブルに備えて、可能なら個人輸入などで緊急避妊薬を常備しておくのは悪くないと思う。
  • 無い場合は産婦人科に行って処方してもらう。やや高額。
  • 女性側で不安な場合は性側でもアクションしたい場合は殺精子剤の使用や、生理周期の調整なども含めてピルの入手(産婦人科受診)を検討する

このあたりが現実的な対応(及び選択肢)、と頭に置いておくと安心かも。

ピルの服用については、仔細に書かれたサイトが色々あるので、Google先生に頼ってください。 なお、日本のピル情報サイトの草分け的存在、「ピルとのつきあい方」さんでは、現在、日本国内で入手性の低い緊急避妊薬の市販化を求めるキャンペーンをやっておられます。

あとがき

そんなわけで、学校じゃ教えてくれないセックスの基礎知識全三回、でした。 戸惑わずに済むのではないかと。

セックスって、第一に、「最もクリティカルなコミュニケーション」だと思うのです。生き物としての根本に近い行為でありながら、自分も相手も危険に曝す可能性がある。クリティカルなコミュニケーションにおいて、大事なのは「自分を大切にすることと他者を大切にすることはイコールである」「自分を愛することと相手を愛することはイコールになりうる」ということ。 愛する、というのはロマンティックな意味ではなく、もっとシンプルに、相手の存在を認めながらコミュニケーションを破綻させない努力をするということ。 その延長線上に生殖があり、ライフプランがある。そこに『恋愛』と呼ばれる過程があるのかもしれない。ないのかもしれない。 「なるべく傷つけあわずに他者とコミュニケートするための知識を持ちえない」というのは、通常のコミュニケーションへのひとびとの意識にも影響しているのではないか、と思う。

フィクションとロマンとしてのポルノでもなく、ロマンティックイデオロギー的な「ハッピーな恋愛☆」でもなく、医学啓発的な語り口でもなく、問題提起でもなく、ただ現実的な行為としてのセックスについての、実際的な(そして混乱を招かない)知識、というのを、淡々とした切り口でまとめてみたかったのです。それ自体、を我々の性を取り巻く状況への問題提起として。

「ふしだらな」ことではなく、忌むべきものではなく、かといって、ナメクジのように親子のように無条件に相手を受容し合う架空の『ロマンテイックな』行為でもなく、かといって「次世代生産義務」でもなく。どれもこれも極端に過ぎる。でも、今更封建社会に戻れない以上、セックスにまつわる現実は、もっと淡々と、知識として共有されていいのではないか。

そんな意識から書いてみた一連のエントリ、お粗末さまでした。

繰り返すけれど、何かしら、お役に立てば幸いです