まっしろな嘘

ニンゲンを勉強中のヤヤネヒによる、なんかいろいろ。

小説「さらざんまい(上)」感想、あとカッパ王国の年代考察

前回記事ー

www.masshirona.red

しばらくさらざんまいの記事が量産される気がしますな!

さらざんまいの小説読んだー

読みました。

さらざんまい (上)

さらざんまい (上)

ネタバレなしの率直な感想としては、小説としてはちょっと物足りなかったかなと。やはりアニメで見たい。展開的には、前情報~一話で提示された情報が掘り下げられる以上のことは起きないので、文章で読んじゃうとけっこうあっさりなんですよね。それで時々耽美度の高い描写(おそらく好きな人は好きなやつ)が挟まるので「???」となったり。

一話のシュールな描写などはサラっと書かれるので、ヤヤネヒ的にはもうちょっと淡々とした文体で読みたかったかもです。ちょこちょこ「んっ?」という記述があったのと、一部の情報がわりとはっきり書かれていた。

「そこだけ説明されてもわからん」みたいな話が続くので、ネタバレ成分は軽めだと思うけど、一応途中で「さらによむ」をいれます。

ストーリーのファーストインプレッション

  • 主人公三人組が各自抱えている事情が、番宣・OP・一話でおよそ示唆されていた内容から大きな逸脱はないんだけれど、思ってたより重かった
  • 思った以上にBのLだった
  • 女装男子が好き勢に朗報ですが、一稀(赤かっぱ)の女装は一話限りではないっぽいですよ
  • CV.釘宮の子は弟

BのL成分は、一話がイケた人は観てる間に慣れるのではないか。ぶっこまれ続けると段々調教されていくと思われるので心配はいらない。

考察勢的に気になったところ

地理関係

前回、微妙に判断に悩んでいた(あちらの地図にも書きますが)公共衛生トイレと駐車場は、どうやらせってい上は花やしき周辺エリアぽい。それでも押上(スカイツリー)のほうだったとすると色々思う所があるのですが、確認の意味で一度アバターにオフライン聖地巡礼に行かせねばならぬ…

カッパとカワウソ

カッパ王国歴333年

ネタバレには含まれないと思うので畳む前。 この数字ですが、おそらく「天正18年(1590)徳川家康は江戸に入府、慈眼大師天海の進言で浅草寺は祈願所に定められ」てから、「1923年、浅草のシンボル・凌雲閣が、関東大震災の影響で損壊、経営難で崩落するまで」の年数ではないかと。

以下、ネタバレ度が上がるので畳み。

浅草寺の歴史と怪異

www.senso-ji.jp

さらざんまい世界でカッパ王国とカワウソ帝国が戦争している旨が明言されましたが、これは後半で何かあるかなぁと。

牛鬼と河童のルーツは共通して当時の被差別民、前者は鎌倉時代、王権によって武器を奪われ、勢力の尖兵となった浅草寺によって向島方面(スカイツリーのほう)まで追い立てられ・逃げ延びた人々であり、河童は江戸時代のえた・ひにん階級であったとされます。

前者のかっぱだけど、これは一話で物語の中心になっていた、河太郎像のある「かっぱ町道具屋商店街通り」と「合羽橋本通」、そしてかっぱ寺こと曹源寺の縁起に語られます。

www.sogenji.jp

異端者としての「河原者」の象徴。

もう一つ、浅草の歴史、そして怪異史的に外せない要素として、「牛鬼」がいる。浅草寺の古文書での初出は、鎌倉時代に編纂された歴史書、「吾妻鏡」における、「建久3年(1192)鎌倉で営まれた後白河法皇の四十九日忌『百僧供養』に、浅草寺の僧侶3名が出仕したというもの。ついで、建長3年(1251)、浅草寺の食堂に怪牛が現れたというエピソードがある。

淺草寺に怪牛現はる 6日 丙寅 武蔵國淺草寺に牛のごとき者忽然として出現し、寺に奔走す。時に寺儈50口ばかり、食堂に集曾(しきゑ)するなり。件の怪異を見て、14人たちどころに病痾(びょうあ)を受け、起居進退成らず。居風と云々。七人即座に死すと云々。(「全譯吾妻鏡 第1卷」より 新人物往来社)

浅草寺に怪牛あらわる。淺草寺に牛みたいなやつが忽然として出現して境内を走り回った。食堂に集まっていた僧侶50のうち、14人が疫病を受けて起き上がれなくなった。7人は即死した。

サラっと怖い。

「新編武蔵風土寄稿」には、「浅草川から牛鬼のごとき異形が現れて牛嶋神社に飛び入って社宝・牛玉になった」という記述があり、風土研究的には同様の出来事を差しているとの味方が主流であるらしい。浅草寺に出現して境内を走り回った「怪牛(のちに牛鬼とされる)」が、浅草寺境内を走り回って疫病による死傷者を出し、隅田川を渡って牛嶋神社に祀られた、ということになっている。らしいです。そして、冒頭に書いたとおり、幕府の尖兵となった浅草寺によって向島(現在のスカイツリー)方面まで追い立てられた人々の反乱であったという説もあります。反乱っていうか。テロか。

えーと、前回つくったのまっぷ見て欲しいんですけど

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右のほうに牛嶋神社ってありますね。貞観2年(850)、慈覚大師が素戔嗚尊の化身であるおじいさんに出会い、神託を受けたのが由来とされる、古い神社です。言問通沿いに言問橋を渡って右手(ただし墨田公園側に回らないと入口がないので参拝しようとしたらぐるっと回る必要がある)。

Google Mapだとここ。

「川向こうに封印された河原者」伝承より、かっぱ伝説のほうが新しい。カワウソ帝国のほうが古い?

カッパとカワウソの対立ってモチーフは芥川龍之介の『河童』だと思われるんですが、それはそれとして、「本当の大人の妖怪モノ(@幾原監督インタビュー)」として「さらざんまい」を考えたとき、浅草の歴史を踏まえると、まぁこういう推論が立つかもって。ウッソー。

「カッパ王国がカワウソ帝国に滅亡させられた」とケッピは主張しているわけですが、これは嘘を言っている(あるいは一方的な事実だけを述べていて、情報を伏せている)かもしれない…きがする?

さらざんまい世界の勢力図

一行ですんごい考察ブーストしてしまったんだけど、

   ???

  (浅草寺)

 /    \

かっぱ - カワウソ

(凌雲閣) (スカイツリー)

って三竦みがあるんじゃないかな、って、ヤヤネヒは予想してて。「かっぱ王国歴333年」の一行から、だいたいの歴史的なモチーフにアタリがつけられるようになって、大筋としては外してなさそう、みたいな感想になった。って話でした。

放映前に言われてた「津山33人殺しがモチーフ」説

もうTwitterの話題的でも出なくなった気がしますが。遥君(青かっぱ)が前科持ちだったのはちょっとびっくりした。 今後、凌雲閣の歴史と同じく「33」を揃える形で、過去の事件として触れられるとか、後半のモチーフとして登場する可能性は微妙にある。

箱、猫、キス、そば、サシェ

小説でネタバレされたカパゾンビさんたちの縁起(?)。 前半クールはそれぞれが主人公たちの物語と絡められる話で物語で進んでいくようですが、これは何を意味するんだろう。箱はイクニ作品頻出ワードだからまだわかる。ネコがわからん…

フロイト的には五感と快感原則、ラカン的には鏡像段階(自身が得られなかった愛着の対象への同化を求め、犯罪に及ぶ男たち)、去勢(尻子玉を抜かれる)による象徴界への参入、さらざんまいによる胎内回帰体験、父の名(遥のエピソード)、母子関係(春河と一稀のエピソード前半)みたいな感じかなあ。放送本編見ないとわかんないです。ピクトグラムやロゴのモチーフの細かさが怖いんですが、あれはいったいどうやって指示を出しているんだろう…

尻子玉

6話みてから書きたい

警官さんたち

@keeponly1luvっていうのが、そのまんまの意味だった。描写が思ったより濃かったです。いろんな意味で。いろんないみで。

この場面

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楊枝が一本しかないー、急須が左向きー、左の人は大福にもお茶にも手をつけてないー。

この場面をみて不吉な想像をしていたみなさま、おめでとうございます。正解です。せいかーい。 阿久津真武さんの阿久津って苗字、うしかい座アルクトゥスからって推測してたんだけど(玲央さんは文字通りしし座と思われる。春の大三角)、「うしを飼っている」ではなくて「うしに飼われている」だったのかな。

しかし、カワウソ王国の使者(?)として登場する彼らですが、どの段階でカワウソ帝国側になったのかが謎で。(ア)ってのがおそらく浅草神社側(カッパ王国とのつながりはわかんない?)、カワウソマークがカワウソ帝国側?

「玲央と真武」のTwitterアカウントだと、彼らは「カワウソ帝国に侵略される浅草を守る」立場にいるっぽいのです。

このアカウントのストーリーを要約すると、「浅草を守る警官二人組としてのんびり暮らしていた玲央と真武、しかし『上』からの命令により、事態は風雲急を告げる。街に増え続ける謎のカワウソマークを追って、行方不明になった真武。どうする玲央!」みたいな感じ。

「欲望」「搾取」の湯のみは、けっこう序盤でかっぱ橋の食器屋さんで買ったことになっている。一通り読むと「ギザ歯で地黒で金髪で料理が上手いほうが玲央さん、色白で黒髪で字が汚いほうが真武さん」みたいな印象になります。

こちらのスピンアウトでもお二人は(サラちゃんのお母さんを2人でやりながら)まったりやっている。本編のカリカリ感との落差!

2018年? に浅草でのらりくらり楽しそうに生きていた彼らが、1923年(別時空?)に軍服を着て帝国側の存在としてカッパ王国に攻め込んでいる。どういうこと。放送前の段階で「カレンダーが2018-2019年のものでない」旨指摘がされてたけど、じゃあ何時のカレンダーなんだろう。

あと、書籍版初出の情報として、「カパゾンビにされた人間は尻子玉を消化されると存在が消える」と。 つまり彼らが認識できないところで、カッパやカワウソのせいで人間が消えていた可能性がある……浅草の平和とは……

イクニ作品(とくに00年代の三作)の集大成感ある

6皿目が完全に「ピングドラムをもう一度」だった。

カッパ王国滅亡のくだり、関東大震災-凌雲閣崩落のメタファーと捉えると、「かえるくん世界を救う(『輪るピングドラム』9話の図書館に置かれていた本)」っぽさがあって、イクニ監督、村上春樹好きだなー!みたいな。あっ、かえるって言ったらヤヤネヒはケッピに尻子玉を抜かれてしまう。

かっぱ像は「いつ誰が立てたのかわからない」、ケッピの元ネタ・河太郎像の建立は平成15年=2003年、東日本大震災が2010年。交番の造形・位置と同じく、時空がゆがんでいる?

一稀は晶馬(春河を助けるくだり/自己犠牲)と陽毬(偶像への同化)と紅羽(キスをされる側)、遥はピングドラムの「父権(今回は兄)を追い掛けて犯罪に追い込まれる少年」(冠葉)、燕太はカラーリング的にユリ熊嵐のるる姉弟、警官さんたちはウテナ・アンシー、サネトシせんせいと「断絶の法廷」の三人組、春河は林檎とるる弟(みるん)を連想させるような。パーツをバラして混ぜた感。

おしまい

いじょ。

小説さらざんまい(上)を読んでヤヤネヒが気になったところでした。

さらざんまい (上)

さらざんまい (上)

先の展開が気になっている人、作中モチーフの整理をしたい人は持っておいて損ないと思います。今クールのイクニ作品は同人が盛り上がる気がする。どの層を狙ったのかはヤヤネヒにはよくわからない。女装男子とCV.釘宮のショタが好きな宇多田は一話でエキサイトしていた。

落ち着かなくて1話を20回くらい見てしまったんだけど、ヤヤネヒ的には女の子がものたりないので、もういっかいユリ熊嵐をみてくるしか…後半までえねるぎーもつかな…