まっしろな嘘

ニンゲンを勉強中のヤヤネヒによる、なんかいろいろ。

ASDのガールズト…発達障害者のための雑談の技術、人間の話が聞き取れない問題について

www.masshirona.red

先日書いた「ASDと雑談」エントリの続き、というか補足です。 そう、重要な問題があるんだった発達障害者。

「会話の聞き取りができない」

聴力には問題がないんだけど聞き取れない。個人的な話をすると、所謂、まだ20khzより上の帯域まで聞き取れるので、ネズミ除けのモスキート音発生装置が普通にキツいんですが、会話の聞き取りはぜんぜんだめです。ASDにしろADHDにしろ、発達障害自閉症系統の人間はだいたいこの問題を抱えているんですよね。定型発達度の高い人には、「カクテルパーティ効果」と呼ばれる現象*1というのがあるようで。

カクテルパーティ効果とは?

(参照)カクテルパーティー効果 - Wikipedia

カクテルパーティーのように、たくさんの人がそれぞれに雑談しているなかでも、自分が興味のある人の会話、自分の名前などは、自然と聞き取ることができる。このように、人間は音を処理して必要な情報だけを再構築していると考えられる。

発達障害を抱える人には感覚過敏を伴う者が多く、とりわけ聴覚過敏があるとカクテルパーティー効果が弱かったり、働かなかったりする。発達障害者の中でも特に自閉症スペクトラム障害(ASD)に該当する者は聴覚過敏が強い傾向があり、雑音を遮断する脳機能を持っていないために選択的聴取が全く出来ず、騒音下での聴き取りが著しく困難な場合がある。

はい、これ。後半。「選択的聴取ができない」 板書やレジュメのノートをちゃんと作ってくれない先生の授業についていけない、ついていこうとしているんだけど困ってるポイントがわからなくて、ついていけないのを「やる気がない」とひたすら怒られてつらかった、などの経験がある人も多いのではないでしょうか。この傾向、話す人-聞く人の関係性が流動的で、しかも周囲に雑音があることが少なくない、所謂『雑談』だとけっこう致命的なんですよね。*2

APD(聴覚情報処理障害)って呼ばれたりもするようです。

(参照)聴覚情報処理障害(APD)のサイトにようこそ!! - apd-community ページ!

APDには、次のような特徴があります。     音は聞こえるが、言葉が聞き取りづらい。 騒音下で特に聞きづらい。 相手の話声のスピードが速いとついていけない。 複数の人に話しかけられると、どちらの話もわからなくなる。 話を長く聞いていると、集中力が継続しない。

『感音性難聴』って表現もありますが、おおむね同様の症状じゃないかと。逆にいうと、コミュニケーションの障害にこの手の問題が一緒に乗る人は、神経症ではなく、自閉症スペクトラム障害(ASD、広汎性発達障害ADHDなど)の可能性が高いと認識しています。今回は、この問題について、「雑談の技術」に絞って解説していきます。

どうする?

何はともあれ、困るもんね。自分の知ってる対応は以下5つです。

  • 無理をしない。

  • 聞き返すのを躊躇しない。

  • 文字情報に頼る。

  • 会話についての情報を、別ルートで仕入れておく。

  • どうにもならないときは諦める。

以下、順番に説明していきます。

無理をしない。

前回、「相槌」の重要性を強調しましたが、ぶっちゃけた話、「雑談」のフェイズだと、定型発達のひともそこまで細かく他人の話を聞いてません。とりあえず「話してるっぽい状態にある」ことに最大の意味があるのが「雑談」なので。必要に応じてヒントを探す穴埋め問題のようなものです。

第一段階としては、「今、何の話をしているのか」がわかっていれば十分です。重要なキーワード(『お題』的なもの―――固有名詞、状況、トピックの重要な単語など)が聞き取れないときは、次項以降の対策に頼りましょう。

聞き返すのを躊躇しない。

話題の重要ポイントを見極めて、鸚鵡返しをする。これは雑談にある程度慣れてくると勘所がわかってくると思いますが、そもそも聞き取れないことがあります。そういった場合、「ごめん、聞き取れなかった。もう一回言ってもらっていい?」と尋ねてみましょう。会話の大筋がわかるならそれでOKです。

どうしても難しい場合、「ごめんね、人が多い場所だと話すのが苦手なんだ」と伝えて、次の項、あるいは、可能なら、聞き取れる場所に移動することを考えましょう。

文字をつかう。

親しい人同士であれば、ラインやslack、SNSなどでメッセージを送って、それを見てもらったりします。「場所柄、うまく聞き取れない」旨も躊躇せず伝えるのがいいと思います。スマホが便利。私はノートを持ち歩いていますが、筆談はたまにやると面白いので、文字を掛ける場所ならオススメです。

あと、喫茶店で対面でSNSやLINE、DMなどをを送りあっている、というの、ちょっと楽しいのでおすすめです。隣に聞こえるとマズい話題のときとか。気になるあの人と内緒話できるかもしれない(?)

会話についての情報を、別ルートで仕入れておく。

例えば、美術館で人と一緒に絵を見るようなとき、入口で配られる解説や立て看板を参考にします。

これは雑談でもない場合も有効で、授業ならまずレジュメと教科書に目を通しておく、仕事先での雑談であれば、あらかじめ相手の情報を調べる、過去のメールなどのやりとりを確認しておく、交換した名刺をよく見る。など。音の一部が聞き取れると「この話だ」とわかるので、各段に聞き取りやすくなります。視覚からのほうが情報の選別が容易なので、目をサラにして観察していきましょう。

どうにもならないときは諦める。

重要度のそんなに高くない会話の場合は、まぁ2割聞ければ上等、まったく聞こえなくてもその後に問題なさそうなら愛想良く振舞って先送りにしてしまいましょう。政治性のある雑談というか、会話内容そのものより、相手を気分よくするほうが重要な場合は、挨拶と共感と称賛を突っ込んでおけばさしあたり問題ありません。段々イケてくることもある。

雑談の難しさと向き合うために

普段の消耗を避ける!!場所をなるべく選ぶ!!! 重要度が高い場合は前もって会話の知識を仕入れておく!! 無理をしない!!! 可能なら、人が少なく、音楽がうるさくない場所を選ぶ……たとえば「飲み」などで、やかましめの大衆居酒屋が会場になりそう(しかも選べり立場にない)ような場合、不参加なり場を温めることに徹するなり、サクっとあきらめましょう。聴力自体に問題ない人は、常時耳栓にするとイケることがあります(ここは個人差)

あとこれ。

イヤーマフすごいんですよ。

こんなに心に平穏が訪れるのかというくらい静かになる。

世界が。

世界が。

一人に一個必須。普段の消耗を避けるのに必須。電車とか地下鉄とか人込みとかすんごい疲れるけど、これ使うと一発です。着圧がダメな人もいるっぽいので、その場合はノイズキャンセリングヘッドフォンとか。とにかく、省エネを心がけておかないと肝心のときにヘロヘロになります。もう一回書くぞ。

普段の消耗を避ける!!!

私はノイズキャンセリングヘッドフォンに投資するお金がないんですが、識者に訊いたらお勧めはこのへんだそうです。あとはレビュー見て決めてくれたまい。安い順。

SONY ウォークマン Mシリーズ 16GB シルバー NW-M505/S

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ヤヤネヒ的には、最強はイヤーマフだと思うんだけど…値段が一桁違うし…あとノイズキャンセリングヘッドフォン、逆相漏れのホワイトノイズがちょっと苦手。

おしまい

「雑談とコミュニケーション」を軸に解説しました。

とはいえ、発達障害の人はだいたいの場合、嗅覚、触覚等にも同様の問題を抱えていて、共感覚的な特性を持つ人がたぶん多いんですよね。私は一部の五感の感覚質の区別がつかない体質で、パニック発作の頻度は減ったんだけど、未だに飽和状態になって動けなくなることがあります。重要度の高い「雑談」の場合、前もって文字で浚える情報(SNSで確認できる相手のパーソナルデータ、共通の話題など)を確認しておく、などの処世術も必要になってくる気がします。コストとリスクを天秤に掛けて、体力を投資してゆきましょう。

あと、無理しない。

他人に興味を持てないのは、「内向的だから」っていうより「人よりも体力が要るから」って人もけっこういると思います。無理はせずにいきましょう。疲れれば疲れるほどダメになるので、ダメだと思ったら家に帰って寝る!大丈夫なときに頑張る!!無理なときは無理!!お前は人間なのだから限界がある!!!

世の定めを知れ。

そんなこんなの「雑談の技術」続編でした。おわり。

*1:能力じゃね?って思うけど『効果』なあたりにこの社会は定型者のために作られているのだなという感じがする

*2:前回記事後、なるべく早めにフォローしたかったんだけど間が空いてしまった